会計士が解説!監査法人の基礎知識について

クーちゃん

公認会計士の働く監査法人ってどんなところ?
ざっくりした年収や働き方は?
大手監査法人・準大手監査法人って何?

今回はこのような疑問に答えれるように解説します。

こんにちは。大阪の会計士/税理士の唐木です。

公認会計士試験に合格した後は、監査法人に就職し監査業務に従事するのが一般的です。
公認会計士は、会計・監査の専門家であり、監査を実践できる場が監査法人での業務と言えます。

今回は、そんな監査法人について、解説したいと思います。

目次

監査法人の業務内容・年収・勤務方法

監査法人は、公認会計士が働く会社というイメージとなります。監査法人では、財務書類の監査や調査を行うことを主な業務としています。例えば、金商法・会社法等の法律で監査が要求されている財務書類の監査、会社の買収をするため事前に買収先の財務内容を確認するための調査、新規上場に向けたショートレビュー等があります。

特に財務書類の監査は、監査法人又は公認会計士しか実施できない独占業務であり、法律で毎年実施することが要求されていることから、不景気に強いという特性があります。独占業務ではないことから、例に挙げた財務書類の監査以外の項目は、監査法人ではなく、会計コンサル系のコンサルティングファームが実施することもあります。

監査法人での年収はざっくり、スタッフで500~600万円、シニアで700~900万円、マネージャーで1,000万円~1,200万円、パートナーで、1,500万円~といったイメージです。

勤務方法は、監査自体在宅でも実施できる業務であることから、コロナ蔓延後は、在宅とクライアントへの往査、必要に応じて事務所に勤務するという方法が主流になっています。座席が役職がつくまではフリーアドレス制であることや、昼食の時間がバラバラであったり、フレックスタイム制が導入されているケースがある等、一般の事業会社に比べると自由度はかなり高いと思います。

監査法人での役職とそれぞれの役割

監査法人内での役職別の役割は以下となります。
パートナー:サイナーとして監査報告書にサインを行い監査の結果に責任を持ちます。例えば、監査済みの財務諸表において重要な誤りがあり、監査法人が役割を果たせていなかったと判断される場合に、株価が大幅に下落したことについて、株主から訴訟された際には、その責任を監査法人と一緒に背負う必要があります。サイナーは、無限連帯責任を負いますので、借金をしてでも損害を賠償する責任があり、かなり重たい責任を負うことになります。
マネージャー・シニア:主査としてクライアントの相談対応、審査対応、スタッフの育成、業務の管理、日程調整等で監査チーム全体の管理をします。マネージャーはシニアの上位職となりますが、シニアをフォローする立場になったり、シニアよりも大きなクライアントの主査を担当することになります。
スタッフ主査から与えられた業務として監査調書の作成をします。スタッフは、主査から勘定科目を割り当てられるので、割り当てられた勘定科目の調書を作成することになります。

監査法人の特徴

監査法人の業務の進め方の特徴の一つとして、監査法人が抱えるクライアントに対して人をアサインすることが挙げられます。
どういうことかというと、監査法人は抱えているクライアントにパートナー、主査、スタッフを割り当てて、主査がスタッフの日程を日毎にアサインして調整をします。
つまり、仕事ができる人はいろんなクライアントが割り当てられて、仕事ができない人は、仕事が割り当てらず仕事がなくなり、自己学習等で日程を消化するといったことが起こります。特に大手監査法人でこの傾向は顕著で就職氷河期で大量に人が余っていた際は、クライアントの割り当てを全くなくして自主的にやめさせようとする動きもあったようです。

スタッフについては、クライアントとの関係構築の観点から良くない影響もあるかと思いますが、基本的には慣れてくれば替えが利くようになります。そのため、スタッフについては、育休や時短の制度が採り入れやすく、お子さんを持つママさん会計士も比較的働きやすいと思います。また、そのような特徴からスタッフについては、日程が開いている日に有給を消化することができること、シニア以降の役職者については、自身でスケジュールをある程度コントロールできることから、一般の事業会社に比べ、有給は比較的取りやすいと思います。

監査法人で勤務するといっても大手監査法人・準大手監査法人・それ以外の中小監査法人で勤務するのかで、得られる経験等が異なりますので、それぞれ特徴を解説します。

大手監査法人の特徴

大手監査法人は、一般的にBig4と言われ、EY新日本(アーンスト・アンド・ヤング)、トーマツ(デロイトトウシュトーマツ)、あずさ(KPMG)、PwCあらた(プライスウォーターハウスクーパース、略してPwC)の4つの監査法人を指します。これらの大手監査法人は、それぞれカッコ書で記載したグローバル会計事務所と提携しています。ざっくりとした個人的なイメージは、EY新日本はおとなしいタイプ、トーマツは体育会系、あずさはイケてる系、PwCは外資系のクライアントが多く英語ができる人が行くというようなイメージです。

大手監査法人は、グローバル会計事務所と提携していることから、監査ツールについても、品質が高いものを使っており、グローバル会計事務所によっては、日本公認会計士協会等の公的な機関による検査とは別に、グローバル会計事務所からの検査に対応する必要があるため、監査品質は高い傾向にあります。逆を言えば中小監査法人に比べ監査のマニュアルがきっちり作成されていることから、対応しなければならない事項も詳細に定められているため、自由度は低いということになります。

大手監査法人にはブランド力があることや、中小監査法人がそもそもグローバル会計事務所と提携しておらず、海外に子会社が多くあるクライアントの監査が困難であること等により規模の大きいクライアントの監査をしているのが特徴です。また業種としても高度にITを使用する金融機関等も含まれており、多様であるといえます。

公認会計士試験に合格した後の就職先としては、大手監査法人に就職するのが一般的です。大手監査法人では、だれもが知っているようなビッグクライアントの監査もあることから、ビッグクライアント1社の監査のみを担当している人もいます。また、業種別等で分けられている部署に配属されるため、配属される部署で担当する業務が決まるので総合力というよりは専門的な経験を得ることができるのも特徴です。

準大手監査法人と中小監査法人の特徴

準大手監査法人は、一般的に太陽(グラント・ソントン)、PwC京都(PwC)、東陽(クロウ・グローバル)、仰星(ネクシア)、三優(BDO)の5つの監査法人を指します。この中では、2018年に優成と合併した、太陽の規模が比較的大きいです。また、これ以外の中小監査法人となると個人事務所が少し大きくなったという規模感となります。ちなみに監査法人の設立には、5人以上の公認会計士が必要になります。

準大手監査法人については、大手監査法人同様にグローバル会計事務所と提携しており、監査の品質は、中小監査法人に比べると高いものとなります。ただ、監査品質については、それぞれの監査法人でまちまちとなります。金融庁が監査法人がキチンと監査をしているかを確かめるため、定期的に検査を実施しています。この検査で処分対象となる事項が検出された場合には、監査法人が行政処分を受けることになります。行政処分を過去に受けているかどうかについては、金融庁のホームページから確認することができます。

クライアントについては、大手監査法人に比べブランド力に劣ることや提供できる業務の幅が狭くなるため、大手監査法人に比べると小さい規模のクライアントが多くなります。近年は大手監査法人が人手不足であったり働き方改革を図るために、採算の悪いクライアントとの契約を切る流れがあり、そのようなクライアントが準大手監査法人に流れているという動きがあります。また、クライアント側での視点でも、大手のブランド力よりもコストパフォーマンスを重視する動きがあるようです。

準大手監査法人には、公認会計士試験前に社会人経験がある方や30代ぐらいの方が、好んで就職するというケースがあります。大手監査法人と比較すると、部門間での垣根が低いことから、様々な業務にチャレンジすることができることから総合的な経験を得ることができます。

PwC京都は、2023年12月1日に同じグローバル会計事務所と提携している、大手監査法人のPwCあらたと合併することが協議されています。

まとめ

監査法人について
  • 監査法人は、公認会計士が主に勤める会社のことで、基本的には財務諸表監査を行っている。
  • 監査法人は、法律で受けることが強制されている監査業務を主に行っており、法律が変わらない限り毎年監査を受ける必要があるため、不景気に強い特徴がある。また、働く人からするとクライアント毎に人を割り当てるアサイン制を採用しており比較的自由な雰囲気がある。
  • 大手監査法人は、ブランド力があり名の知れた大企業を担当している。部署により担当している業務が異なることから専門的な経験を得ることができる特徴がある。
  • 中小監査法人は、大手監査法人に比べると、小さめの企業を担当しているものの、部署間の垣根が低く様々な業務を経験できるため、総合的な経験を得ることができる特徴がある。

終わりに

今回は、「監査法人」について解説しました。

監査法人は一般の事業会社と比較すると自由に働ける環境があります。
私自身、事業会社で勤務していた経験がありますが、近年は在宅勤務が普及したこともあり、自由度はかなり高いと感じています。
また、年収についても、事業会社と比較すると若い時から多くいただける環境にあるのでその点も良いポイントです。
監査という業務の特性上社会的な責任を重く感じる時はありますが、その分やりがいもあると感じています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは!

目次