会計士が解説!継続企業の前提に関する注記(GC注記)について

クーちゃん

GC注記って何?
どのような状況になるとGC注記がされる?
GC注記を検討する流れは?

今回はこのような疑問に答えれるように解説します。

こんにちわ。大阪の会計士/税理士の唐木です。

あまり付されることはありませんが、特に重要な注記として、「継続企業の前提に関する注記」があります。

「継続企業の前提に関する注記」は、英語表記の「Going Concern」(ゴーイングコンサーン)の略語で「GC注記」と呼ばれるので、以後は「GC注記」と記載します。

今回は、この「GC注記」について解説をします。

「GC注記」を検討しなければならない「経理担当者」や「監査法人の現場責任者」、「株式投資をする投資家」の方にとって有用な解説となっておりますので、ぜひ読んでみてください。

目次

GC注記とは

「GC注記」は、会社が倒産する可能性がそれなりにある状況として、1年以内に資金ショートする可能性があると、会社と監査法人が判断した場合に付されることになります。

そのため、かなり限定された状況において注記がされることになります。

「上場会社への就職や転職を考えられている方」や「投資家の方」は「就職先・投資先の上場会社」において、「GC注記」が付されていないかどうかについては、最低限事前に確認したほうが良いでしょう。

GC注記の検討3STEP

「GC注記」をするかどうかは以下の3STEPを踏んで判断することになります。

STEP
決算日時点で継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在する。

監査・保証実務委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」において、具体的な例示が示されています。

・ 売上高の著しい減少
・ 継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュ・フローのマイナス
・ 重要な営業損失、経常損失又は当期純損失の計上
・ 重要なマイナスの営業キャッシュ・フローの計上
・ 債務超過

実務的に見かけるのは、<財務指標関係>の「継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュ・フローのマイナス」や<財務活動関係>の「借入金の返済条項の不履行又は履行の困難性」となります。

「バイオベンチャー」でまだ臨床実験を行っており、薬を販売できていないため、売上がほとんど計上されておらず、費用だけが発生しているため、継続して赤字となっている場合等が該当します。

このような「バイオベンチャー」でも成長性等を加味して赤字で上場することが可能なため、このような企業を担当する場合には、上場前にGC注記の検討を行います。

この「重要事象」が存在する場合には、STEP3の状況とならなくとも投資家に注意喚起するために、経理の部より前の情報である事業等のリスクに重要事象が存在する旨・その具体的な内容及び経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析に重要事象に対する解消するための対応策の記載が必要となります。

STEP
当該事象又は状況を解消、又は改善するための対応を行ってもなお、重要な不確実性が存在するか。

STEP1の「重要事象があるかどうかというのは発生した事実に基づく判断である一方、STEP2の対応策を講じてもなお「重要な不確実性が存在するかどうかというのは、将来予想を含む見積りであるため、複雑な判断が求められます。

そのため、実務上最も見積りの要素があり、難しい判断が求められるのはSTEP2となります。

会社とよく揉めるSTEPでもありますね。

監査法人では、会社が判断した過程を監査し、会社の判断に問題がないかを判断することになりますが、通常この判断においては、監査法人内で審査会を開催して判断するのが通常です。

この「重要な不確実性」が存在するかどうかの判断は、少なくとも期末日の翌日から1年間にわたり企業が事業活動を継続できるかどうかという視点を持って実施することが求められています。

そのため、実務上は、翌1年間の資金計画を会社に作成してもらって、それを監査法人が監査して判断するというのが通常です。

その資金計画には、翌期の売上がどれぐらいでいつ入金されるのかといった見積りが行われたうえで作成されることから、監査人はその「合理性や「達成可能性も勘案して、「重要事象」が存在するかどうかを判断します。

また、銀行からの借入金があり、「財務制限条項(コベナンツともいいます。)」が存在し、それに抵触しているような場合は、銀行にヒアリングし、「財務制限条項」を考慮した返済の猶予期間等の確認をとったりもします。

「財務制限条項」は、期末の純資産が○○期の純資産の80%を下回ってはならないや営業利益が〇〇円を下回ってならない等の財務数字に関わる制限条項となります。
銀行は、貸付先の倒産による取りっぱぐれのリスクを限定するためにこのような「財務制限条項」を付して、「財務制限条項」を会社が果たせなかった場合は、即座に貸付金の全額を回収する等の対応をとります。

STEP2の判断の結果、「重要な不確実性」が存在しないと判断した場合は、監査上特に慎重な判断を必要とするため、監査報告書のKAMの項目として選定されることがあります。
KAMとは「監査上の主要な検討事項」の英語表記の「Key Audit Matters」(キーオーディットマターズ)の略語となり、監査上特に慎重な検討を必要とした事項について、その内容と監査上の対応を監査報告書に記載するものです。
STEP3の「GC注記」まで進んだ場合は、監査報告書上、強調事項として、継続企業の前提に関する重要な不確実性を追記することが求められるため、KAMの項目となることはありません。

STEP
重要な不確実性が存在する場合は、GC注記。

STEP2の結果、会社が検討した対応策を講じてもなお、資金が1年以内にショートする可能性が高い場合には、GC注記を記載することになります。

記載が求められている事項は以下の通りです。

  • 当該事象又は状況が存在する旨及びその内容
  • 当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策
  • 当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由
  • 財務諸表は継続企業を前提として作成されており、当該重要な不確実性の影響を財務諸表に反映していない旨

「継続企業の前提」がなく、「継続企業と認められない会社」については、財務諸表としては、清算株式会社としての「財産目録」を作成し、「財産目録」に基づき「清算時の貸借対照表」を作成することになります。
「財産目録」は、会社に残っている財産について、処分価格で計上することになるため、通常の株式会社が作成する「財務諸表」とは大きく前提が異なることになります。
そのため、あくまで「継続企業の前提」がある中、「GC注記」を記載する際には、「財務諸表は継続企業を前提として作成されており、当該重要な不確実性の影響を財務諸表に反映していない旨」の記載が必要となります。

まとめ

継続企業の前提
  • 「GC注記」は、1年以内に資金ショートする可能性があると、会社と監査法人が判断した場合に付される注記
  • GC注記は、3STEPを踏んで検討する

終わりに

今回は「継続企業の前提」について、解説しました。

「継続企業の前提が問題となる会社」は、あまりありませんが、「バイオベンチャー」等特殊な業界であれば、存在するのでどのような考え方で対応するのか、また、「投資家」の方にとっては、「GC注記」がされている場合のインパクトはどの程度か、「GC注記」がされていない場合でも「重要事象」があれば記載が必要な箇所があるので、確認すべき点を把握しておくことは重要です。

私自身、「GC注記」が問題となる会社も担当しましたが、毎四半期で監査法人内の審査会が必要になったり、会社とも適切なコミュニケーションをとって対応する必要があったりと、かなり手間がかかりました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは!

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