会計士が解説!会計監査の基礎知識について

クーちゃん

会計監査の目的は?
会計監査の根幹にある考え方は?

今回はこのような疑問に答えれるように解説します。

こんにちは。大阪の会計士/税理士の唐木です。

公認会計士は財務諸表監査を行うことを生業としていますが、財務諸表監査と聞いて具体的なイメージが付く方は少数かと思います。財務諸表監査については、金融庁が定める「監査基準」、日本公認会計士協会が公表する「実務指針」「Q&A」等により具体化されており、公認会計士はこれを遵守する必要があります。

今回はそんな会計監査の基本について解説したいと思います。

目次

会計監査の基本的な考え方

会計監査は、監査対象となる会社の利害関係者(例えば、投資家・銀行・株主等)が監査済みの財務諸表により正しく投資等の意思決定をできるようにすることを最終的な目的としています。つまり、監査をすることによって、一切誤りのない財務諸表にするというのが目的ではなく、重要な誤りがなく、利害関係者の判断を誤らせない財務諸表にするということがポイントとなります。

そのため会計監査では財務諸表が誤る要因となるリスクを洗い出して、よりリスクの高いところに対して、重点的に監査するリスクアプローチという考え方を基本に進めることになります。

リスクアプローチによる監査

監査人も人間であり、いかなる注意を払っていても監査を失敗するリスクがあります。ここでの監査の失敗というのは、監査済みの財務諸表に、利害関係者の判断を誤らせるような重要な誤りが含まれていることを指します。

リスクアプローチでは限られた資源をいかに効果的かつ効率的に使って、監査を成功させるかが重視されています。そのため、企業で効果的な内部統制があればそれらを活用しながら監査を進めることになります。

ここで内部統制というのは、会社が実施する様々な業務の適正性を確保するための社内の仕組であり、例えば、仕訳を起票する際には、経理部の担当者がエビデンスに基づき仕訳の起票を行い、その結果を経理部の上席者がチェックをするという社内の仕組みがあれば、それが内部統制ということになります。

経営者は、正しい財務諸表を作成するために、誤りや不正が起こらないようにするための内部統制を整備・運用することが求められます。監査人は、経営者が作成した内部統制を確認し、監査に使える内部統制があれば、それを使いながら監査を進めることになります。

監査人は、内部統制を利用するかどうかを判断し、利用する場合には、内部統制の整備・運用状況を評価し、それに加え、監査人自らがテストを行い、監査を失敗するリスクを許容可能な水準まで引き下げます。

リスクアプローチによる監査の特徴は以下のようなものです。

重要性の概念

リスクアプローチによる監査では、すべての誤りを発見しなくても良いので、監査人が一定の基準で重要性を定め、重要性に応じた監査を行います。ここでの一定の基準というのは、もしその金額の誤りを見つけられなくても利害関係者が判断を誤らない金額となるのですが、通常監査実務では、それぞれの監査法人が定めたマニュアルに従い計算された数字となります。

重要性の具体的な算定方法は、もちろん監査の対象となる会社の特性や財務状況にもよりますが、税引前当期純利益の5%とするのがオーソドックスです。これを重要性の基準値といいます。イメージとしては財務諸表全体としての重要性を判断する金額です。

次に重要性の基準値に一定の割合を乗じたものを手続実施上の重要性として定めます。これは、監査人が監査を実施している中で実際に検証する際に参考にする金額となります。

手続実施上の重要性を定めず、重要性の基準値のみで監査を進める場合、監査の失敗とされる重要性の基準値以下のものはすべて確認しないことになります。

監査の失敗は一つの誤りだけで判断されるものではなく、複数の誤りがあることも考慮して進めないといけないことに加え、監査人が直接チェックしていない範囲から未発見の誤りが発見される可能性があることを考慮し、この手続実施上の重要性を定めて監査を進めることになります。なお、もちろん質的に重要なものがあれば、それは金額に関わらず確認することになります。

手続実施上の重要性についても、それぞれの監査法人のマニュアルで異なりますが、リスクの程度に応じて重要性の基準値に一定の割合を乗じて算定するのが一般的です。 イメージとしては財務諸表項目レベルとして重要性を判断する金額です。

財務諸表監査を受ける立場にいる方は、ざっくりでも自分が所属される会社の重要性を推測で把握しておくと監査対応がスムーズにいくかもしれません。

重要性については、別途以下の記事で解説していますので、ぜひ併せて読んでみてください。

精査ではなく試査

会計監査は、すべての誤りを発見する必要がないため、すべての項目を見る精査ではなく、サンプルベースでの試査で監査を進めていくのがスタンダートな方法となります。サンプルベースで確認し、統計学的に、これだけの件数を見て、エラーがないのであれば、全体としても大丈夫というような心象を監査人が得ていくことになります。

なお、監査を進める中で全件確認できるような少数の数で、重要度の高いものがあれば、試査ではなく精査をするというような判断も当然あり得ます。

まとめ

会計監査について
  • 会計監査は、財務諸表を利用する利害関係者(投資家や銀行等)の意思決定を誤らせないミスが財務諸表にないことを保証するために行われる。
  • 会計監査では、すべてのミスを発見するのではなく、利害関係者の意思決定に影響するような重要なミスがないことを発見する必要がある。
  • 会計監査は、リスクアプローチの概念を用いて、重要性を考慮して行われる。

終わりに

今回は、「会計監査」について解説しました。

会計監査は会社の財務諸表のすべてが正しいことを保証するのではなく、利害関係者の判断を誤らせるような重要な誤りがほとんどないということを保証するものです。とはいえ最近では不正事例もあり、それなりに監査が失敗している事例があります。

監査人としては、不正そのものを発見しなければならないわけではありませんが、不正を起因とした重要な誤りがあるのであれば、それを発見しなければなりません。そのようなこともあり、不正リスク対応基準という基準が定められ、より厳格な監査をすることが求められています。

監査業界は、何かあるとその分監査がより厳格になるような特徴があります。コロナによる在宅での監査についても、会社から入手するデータが電子データになるため、それについて改ざんのリスクがないかを確かめる等、対応することが増えており、これからも増える一方だと思います。これら含め、AIによる監査が発達すれば、最終的には監査のほとんどの仕事がなくなるかもしれませんが。。。

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは!

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