会計士が解説!関連当事者取引について

クーちゃん

関連当事者に該当する者は?
関連当事者取引として開示する際の金額的重要性の考え方は?

今回はこのような疑問に答えれるように解説します。

こんにちわ。大阪の会計士/税理士の唐木です。

会社と緊密な者との取引として「関連当事者取引」があります。

「関連当事者取引」は、特に上場時にも重点的にチェックされる項目であり、重要性がない場合を除き注記することが求められている項目です。

今回はそんな「関連当事者取引」について解説します。

実務的なポイントについても解説しますので、経理実務に携わる方はぜひ読んでみてください。

目次

関連当事者に該当する者は?

「関連当事者」は、会社と緊密な関係にある者であり、「企業会計基準第11号」関連当事者の開示に関する会計基準によって定義がされています。

① 親会社
② 子会社
③ 財務諸表作成会社と同一の親会社をもつ会社
④ 財務諸表作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社
(以下「その他の関係会社」という。)並びに当該その他の関係会社の親会社
及び子会社
⑤ 関連会社及び当該関連会社の子会社

法人関係の関連当事者について、簡単な図解で表すと以下のようになります。

なお、図解の番号は、上記の記載と紐づいています。

子会社と関連会社の違いは、支配力の違いになります。
子会社は親会社が実質的に意思決定機関を牛耳っている状況であるため、親会社に強力な決定権限があるのに対し、関連会社は、親会社が意思決定機関を牛耳っている状況とまでは言えないものの、相当程度の影響力を有している場合に該当することになります。
「日本基準」では「支配力基準」で判断をするため、持株比率のみでの判断をするものではないですが、子会社と言える持株比率は過半数、関連会社と言える持株比率は20%以上になります。

個人関係の関連当事者には、主要株主及び役員のみではなく、その近親者も含まれる点がポイントです。
近親者は、「二親等以内の親族」と定義されており、「配偶者」「父母」「兄弟」「姉妹」「祖父母」「子」「孫」「配偶者の父母」「配偶者の兄弟」「配偶者の姉妹」「配偶者の祖父母」「配偶者の兄弟」「配偶者の姉妹」「配偶者の子」「配偶者の孫」が対象になります。

実務的には全ての「関連当事者」について網羅的に取引状況を確かめるために「関連当事者調査票」を作成し、それを「役員」に配り、記載を依頼して回収することで確かめます。

「関連当事者調査票」は、「近親者及び個人的に所有している会社」の名称・それらの者を含めて会社と取引があった場合には取引の内容の記載を求めるものです。

「関連当事者調査票」により「近親者及び個人的に所有している会社」の情報を入手し、該当する取引がないかを確かめることになります。

また、上場会社であれば、新規取引先との取引の前に関連当事者に該当しないかのチェックをする統制があることが通常です。

関連当事者取引における重要性の考え方

「関連当事者取引」は金額基準を設け重要な取引について開示することとされています。

重要な取引に限定し、金額基準を設けているのは、効率性の観点から利害関係者にとって、重要でない取引の記載を省略しつつも、画一的な開示を求めることで公平性を高めるためとなります。

「関連当事者取引」における重要性は法人と個人で異なり、「企業会計基準適用指針第13号」関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針により定義されています。

(1) 損益計算書項目
① 売上高、売上原価、販売費及び一般管理費
売上高又は売上原価と販売費及び一般管理費の合計額の 10%を超える取引
② 営業外収益、営業外費用
営業外収益又は営業外費用の合計額の 10%を超える損益に係る取引
③ 特別利益、特別損失
1,000 万円を超える損益に係る取引
ただし、②及び③の各項目については、上記判断基準により開示対象となる場合であっても、その取引総額が、税引前当期純損益又は最近 5 年間の平均の税引前当期純損益(当該期間中に税引前当期純利益と税引前当期純損失がある場合には、原則として税引前当期純利益が発生した年度の平均。)の 10%以下となる場合には、開示を要しない。

(2) 貸借対照表項目及び注記事項並びに債務保証等及び担保提供又は受入れ
その金額が総資産の 1%を超える取引

画一的な開示が求められているので、「関連当事者取引」を一覧にして、金額基準を超えているものについては注記を行うようにします。

特に例外的な処理が認められている、損益計算書項目の営業外・特別項目については注意が必要です。

また、「関連当事者取引」については、例え金額的重要性がなくなった場合でも、前期開示していれば継続性を重視して、開示しないといけないこともありますので、この点も注意が必要です。

金商法の有価証券報告書での「関連当事者取引注記」は、連結での記載が求められるのに対し、会社法の計算書類での「関連当事者取引注記」は、単体での記載が求められる点に注意が必要です。
金商法上では連結相殺されて消えてなくなる親子関係での取引は注記の対象外となるのに対し、会社法上では、連結相殺されないため、「関連当事者取引」として注記の対象となります。

まとめ

関連当事者取引
  • 関連当事者は、会社と緊密な関係にある者であり、法人、個人で範囲が定められている
  • 該当する関連当事者に関連当事者調査票を送付し回収することにより、関連当事者取引の有無を確認する
  • 関連当事者取引を開示するかどうかに重要性の考え方があり、基準で定められた重要性の金額を超えた取引について注記する

終わりに

今回は、注記の一つの項目である「関連当事者取引」について解説しました。

「関連当事者取引」は、関連当事者にとって有利な取引である場合、株主に不利益が生じる可能性があるため、上場前にそのような取引については、企業経営の健全性を担保するためにも解消することが求められます。

そのため、過度に株主に不利な取引がされることは通常ありませんが、投資する際には一度どのような「関連当事者取引」があるのか確認しておくことが無難です。

また、「関連当事者取引」の注記の記載がもれたことにより、課徴金を支払っている事例も存在することから、網羅的に開示することを意識することが重要です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは!

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