会計士が解説!「監査」と「レビュー」の違いと「決算短信」について

クーちゃん

「レビュー」って何?
「監査」と「レビュー」の違いは?
「決算短信」は、「監査法人」はチェックしているの?

今回はこのような疑問に答えれるようにわかりやすく解説します。

特に投資家の方は、会社が公表する決算数字を確認する際に有用な情報と思いますので是非ご一読ください!!

こんにちは。大阪の会計士/税理士の唐木です。

「監査法人」は、専門家集団として会計・監査の知恵を活かして、対象となる「財務諸表」が適正かどうかについて意見を表明するのが主な業務になります。

意見を表明するに際して、監査人が「財務諸表」のチェックを行うレベル感の違いで、「保証水準」が異なります。

監査人は、意見を表明するにあたり、「重要性の基準値」を上回る虚偽の表示が存在しないことについて、心象形成をしなければならず、「保証水準」がこの心象形成の程度に影響することになります。

「監査法人」が保証する水準が厳格なものとして「監査」がありますが、「監査」よりも低い保証水準となる「レビュー」も存在します。

世間一般では「監査」と「レビュー」の違いを意識して「有価証券報告書」や「四半期報告書」をチェックしている人は少ないのではないでしょうか。

「有価証券報告書」は、会社が年に1回提出するもので、「監査法人」が「監査を実施した証明書として監査報告書」が付されます。

3月決算の会社であれば、4月~3月の「有価証券報告書」を毎年6月頃に提出することになります。

「四半期報告書」は、会社が四半期毎に年に3回提出するもので、「監査法人」が「レビュー」を実施した証明書として「四半期レビュー報告書」が付されます。

3月決算の会社であれば、4月~6月の「第1四半期報告書」を8月頃に、 4月~9月の「第2四半期報告書」を11月頃に、4月~12月の「第3四半期報告書」を2月頃に提出することになります。

今回はそもそも「レビュー」とは何かということと、「監査」との違いについて解説します。

また、会社が決算を公表するにあたり、「有価証券報告書」「四半期報告書」の提出前に「決算短信」を提出するのが一般的ですが、この内容についても解説します。

目次

「レビュー」って何

「レビュー」は、「監査」と異なり実施する手続が限定されているものの、「監査」同様に保証を与えるために実施する業務です。

「レビュー」は基本的には、具体的なエビデンスを入手してガチガチに検証をするというのではなく、会社構成員に対する「質問」や財務数値の「分析」で完了することになります。ただ、特にリスクが高く詳細な手続が必要と監査人が判断した場合には、追加的な手続が実施されることになります。

「リスク評価手続」と「レビュー手続」を実施することになりますが、「質問」と「分析を中心に手続を進めることになるため、その手続はかなり簡易なものとなります。

会社から資料を入手しても基本的にはそれに対して詳細な検証をすることはなく、特に疑問を抱く点がない限りその資料を使って「レビュー」を進めることになります。

「監査」と「レビュー」の違い

「レビュー」では基本的には、会社の言い分によほどおかしな点がない限り、会社の言い分通りに「レビュー」が進むことになります。「監査の場合、会社から入手した資料については、基本的に検証して監査証拠とするのですが、「レビューでは特にリスクが高い場合を除き詳細な検証を実施しないことから、「監査」とは保証の水準が異なり、「監査」よりも低い保証水準となります。

「監査報告書」と「四半期レビュー報告書」の記載内容でもその違いが見て取れます。

「監査報告書」の監査人の結論は、「財務諸表の状況を適正に表示しているものと認める。」という記載になっています。「積極的形式」で結論を表明しており、保証の程度は「合理的な保証」となります。

「四半期レビュー報告書の監査人の結論は、「財務諸表の状況を適正に表示していないと信じさせる事項が全ての重要な点において認められなかった。」という記載になっています。このように「監査」と異なり、「消極的形式」で結論を表明しており、保証の程度は「限定的な保証」であることがわかります。

「監査」と異なり、「レビュー」では基本的に「リスク評価手続」として、会社が構築する「内部統制の整備状況」について確認することはしません。

また、「監査」で実施する「リスク対応手続」と異なり、「レビュー手続」は「質問」と「分析」で完了することから、「内部統制の運用評価」や「実証手続」を実施することも通常はありません。

「決算短信」は「監査法人」が確認しているのか?

会社は四半期毎に決算を発表しますが、一般的に決算の結果を確認する際には「決算短信」が用いられています。

「決算短信」は、決算の速報であり、決算日後45日以内で公表することが求められています。

ちなみに「四半期報告書」45日以内に公表することが求められており、「有価証券報告書」は、決算日後3か月以内に公表することが求められています。

そのため、「有価証券報告書」「四半期報告書」より先行して発表されることが多いことから、投資家の方は「決算短信」で数字の確認をするケースが多いと思います。「四半期報告書」については、公表期限日が「決算短信」と同日であることから、「決算短信」と同日に発表する会社もあります。

「決算短信」については、証券取引所の適時開示ルールに基づき作成・公表されることから、「監査法人」の意見表明の対象とはなりません。

「有価証券報告書」「四半期報告書」については、「金融商品取引法」という法律に基づき作成・公表されることから、「監査法人」の意見表明の対象となります。

「決算短信」は「監査法人」の意見表明の対象とはならないことから、「決算短信」を確認するかどうかは「監査法人」の自由といえますが、会社は「決算短信」の公表数字と「有価証券報告書」「四半期報告書」の数字が大きく乖離すると「決算短信」を修正しなければならないため、当然ながら嫌がります。

このことから、クライアントの要望の程度、「監査法人」のスタンスによりますが、「決算短信」が大きく修正が入らない程度には見ているというのが実情かと思います。

まとめ

「監査」と「レビュー」の違いと「決算短信」について
  • 「監査」と「レビュー」では実施する手続が異なることから、保証の水準が異なる。
  • 「監査」では手続は限定されず、「レビュー」では、「質問」と「分析的手続」に限定して手続が実施されるため、「監査」のほうが保証水準は高く、「レビュー」のほうが保証水準が低い。
  • 年度決算では「監査」が実施され、四半期決算では時間的な制約があることから「レビュー」が実施される。
  • 「決算短信」は、証券取引所の適時開示ルールに基づき作成・公表されることから、「監査法人」の意見対象外となっているものの、追って提出する「有価証券報告書」「四半期報告書」と大きな相違がある場合は訂正対象となるため、そこまで懐疑的になる必要はない。

終わりに

今回は、「監査とレビューの関係と決算短信」について解説しました。

特に投資家の方には、四半期で提出される「四半期報告書」と年度末で提出される「有価証券報告書」では保証の水準が異なるという点は知っておいて損はないと思います。

とはいえ基本的に上場会社であれば、「財務諸表」を作成する能力に大きな問題はないと思いますので、保証水準の違いはあれど、「レビュー」であるからといって懐疑的に「四半期報告書」を見る必要はないと個人的には思います。

会社としても結局は「監査」される1年間の数字について、四半期の数字を積み上げて作成していきます。そのため、特に四半期の数字を歪めようとするインセンティブは働かず、監査人も期末監査の前倒しとして実施する期中監査の過程で監査レベルで会社の数字の確認は都度行っています。

「監査の全体像」について、以下の記事でまとめていますので、ぜひ併せて読んでみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは!

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