会計士が解説!監査手続の確認って何?

クーちゃん

確認って具体的にどんなことをしているの?
確認の時に注意すべきことは?

今回はこのような疑問に答えれるように解説します。

こんにちは。大阪の会計士/税理士の唐木です。

伝統的な監査手続として、確認があります。確認は、監査人が直接監査証拠を入手することができる手続であることから、証明力の高い監査証拠を得ることができます。

主な送り先としては、銀行・証券会社・債権債務を有する取引先・顧問弁護士が挙げられます。
それぞれの送付の目的や特徴は以下の通りです。

送付先目的特徴
銀行預金残高、借入取引、担保情報、保証情報、手形情報、デリバティブ取引情報等の確認。手数料をもらって実施していることもあり基本的に丁寧です。監査法人が設定した対応期日に間に合わない場合は、事前に連絡をもらえることが多いです。
証券会社有価証券残高、担保情報、デリバティブ取引情報等の確認。同上となります。事前連絡は銀行に比べて少ないです。
債権債務を有する取引先債権債務残高に対して確認先が保有している残高情報の確認。
例えば、確認先に対する売掛金10,000円をクライアントが保有していた場合、確認先は買掛金10,000円等として回答。
規模の大きい取引先は、社内での決裁に時間がかかることから、入手までに時間がかかる傾向があります。
規模の小さい取引先は、残高確認状の存在自体知らず、そもそもの内容や記載方法の確認のため電話がかかってくることがあります。
顧問弁護士確認対象期間における訴訟事件の情報等の確認。残高確認状の対応に慣れており、その意義も知っていることから、概ね期日を守って回答してくれます。

上記の目的に記載の確認したい情報は、全て会計に関する事項で、実際に会社の財務諸表に計上されている金額であったり、注記の妥当性を検証するために、監査人が得たい情報になります。

顧問弁護士宛の残高確認状の送付は、私自身それなりに実施しましたが、今までに1度しか期日に遅れた記憶がなく、それも郵便事故によるものでした。

顧問弁護士宛の残高確認状の送付タイミングと回収のタイミングについては、特に注意が必要です。
期間の設定は監査法人のポリシーで異なりますが、監査法人の意見審査日の1週間以内等、意見審査日に相当程度近い日に残高確認状が監査法人に到着するように依頼する必要があります。
顧問弁護士に対する残高確認は、後発事象の確認を主な目的として実施するので、監査人は意見提出日時点に後発事象があるかどうかを確認する必要があるため、可能な限りギリギリなタイミングで残高確認状を受け取る必要があるのです。

残高確認状のフォーマットについては、それぞれの監査法人で異なるものを使っていますが、ベースとなるものは日本公認会計士協会が公表する監査委員会研究報告第6号「銀行等取引残高確認書及び証券取引残高確認書の様式例」、監査委員会報告第73号「訴訟事件等に係わるリスク管理体制の評価及び弁護士への確認に関する実務指針」等を参考に作られているので、一度見てみるとイメージがつくかと思います。

これらは、日本公認会計士協会の公式ホームページで確認することができます。

銀行・証券会社は、監査人からの残高確認状の対応に当たって、1回3,000円程度の手数料を取って対応しています。
この手数料はクライアント負担となりますので、一度手数料がもったいないのでクライアントが別途入手している残高証明書等で対応できないかと聞かれたことがあります。

これについては、確認が監査人が直接実施する手続改ざんのリスクのない監査証拠を入手できることや残高証明書に記載されている情報よりも網羅的に情報を入手するために、代替できない旨を伝えました。
上記は一般的によく言われることかと思いますが、個人的には改ざんのリスクについては言い始めればきりはなく、昔からやっているから、伝統的に実施しているにすぎないと感じています。

確認の流れと実務での知識や経験を基に特に注意すべき点を解説したいと思います。

目次

確認の流れと注意点

STEP
確認先の選定

初めに確認を実施する対象を選定します。

銀行・証券会社・顧問弁護士については、基本的にクライアントが関わっているすべてを対象とします。債権債務を有する取引先については、監査法人のポリシーに従いサンプルベースで確認先を選定したり、母集団が少数であれば、全件送付する等します。

STEP
コントロールシートへの基本情報の記載、コントロールシートのクライアントへの送付

監査法人ごとに所定のコントロールシートがありますので、それに基本情報を記載します。

基本情報は、確認先名、確認残高、確認先住所、クライアント名、クライアント住所、発送日、回収期限等が記載されていますので、それらの情報を記載します。この中で確認先住所については、情報を個別に入手していない限りわからないと思います。

そのため、監査法人でコントロールシート更新後、クライアントにコントロールシートの内容に間違いがないか確認してもらい、確認先住所が不明な場合は、クライアントに確認先住所を埋めていただき、再度監査法人に送付してもらいます。

STEP
コントロールシートの受領、住所チェックの実施

コントロールシートをクライアントから受領した後、住所チェックを実施します。

住所チェックは監査法人側で、クライアントが入力した住所に誤りがないかを、インターネット検索による公式ホームページの情報と整合していることをチェックする等で確かめる手続です。

このタイミングでクライアントが記載した情報に誤りがないかをしっかり確かめることが重要です。もし誤っている場合は、全く関係のない住所に送ってしまうことになり手戻りになります。確認は、回収までに時間を要することがあり、監査の完了段階までもつれこむこともあるので、できるだけ手戻りなく実施することが重要です。
また、住所チェックは、確認先の住所誤りを発見するだけでなく、クライアントが意図的に関係のない住所に確認状を送り付けて不当な回答を得ることも考えられるので、不正防止の観点も意識して実施することが重要です。
私が経験したものとして、前㈱と後㈱を間違えて、全く異なる会社に送付をしてしまったことがあるので、㈱の位置にも注意しましょう。

STEP
残高確認状の作成、クライアントへのPDF送付

住所チェックが完了したコントロールシートを基に残高確認状を作成します。

監査法人にもよりますが、コントロールシートはエクセルで作成していることが多いので、差込印刷を使って、ワードに変換することで、ワードの残高確認状を作成します。このワードをPDF化して、クライアントにメールで残高確認状を送付します。

ワードのまま送付してしまうと、クライアントに改ざんされる可能性がありますので、必ずPDF化してから送付します。やろうと思えば、PDFでも改ざんすることが可能ですが、ワードの方が容易に改ざんできるので改ざんの機会を減らすためにPDFで送付します。

STEP
クライアント側で残高確認状(PDF)の紙出力、社印の押印、監査法人への送付

クライアント側で、監査法人から入手した残高確認状のPDFを紙出力して、社印を押印します。その後、社印押印後の残高確認状をまずは、監査法人に送付してもらうようにお願いします。

確認は証明力の強い監査証拠を入手するために、監査人が直接回答を入手することが求められるため、クライアントから取引先に送るのではなく、監査人から取引先に送付する必要があるので、監査法人に送付してもらう必要があります。

テストとして、中間期で残高確認を実施する場合等、残高確認状を監査証拠として使用することを想定していない場合には、クライアントから取引先に送ってもらって、取引先から監査法人に返送してもらうということはあり得ます。

特に銀行や証券会社等の金融機関宛に確認を実施する場合には、押印する印鑑や残高確認状の届出者名の記載には注意が必要です。それなりの規模の会社であれば、代表者印と銀行印を分けて使用していることが通常であり、金融機関宛の残高確認状に誤って届け出した印鑑と異なる代表者印を押印してしまうと受理されずに返却され二度手間となります。
また、届出者名についても金融機関と異なる情報で残高確認状を作成するとこれも返却され同じく二度手間となります。届出者名については、特に代表者が変更になった場合等は、金融機関に代表者名の変更届出書を提出しているかを確認する等注意が必要です。

STEP
監査法人からの取引先への残高確認状の発送、残高確認状の取引先からの回収

クライアントから監査法人へ残高確認状が届いたら、監査法人から確認先へ残高確認状を発送します。

この際は、返信先が監査法人となっている返信用封筒をつけて発送します。

残高確認状には問い合わせ先が監査法人となって記載されているので、発送後、クライアントの取引先である確認先から直接電話をもらうことがあります。

監査人としては直接クライアントの取引先と接する機会はあまりないので、この対応は個人的には結構好きだったりします。

問い合わせの内容は、大体決まっていて、既に支払い済であるがどのように記載すればよいかであったり、確認残高と認識している残高が違うのだがどのように記載すればよいか等、残高確認状への記載方法を質問されることが大半です。

その後確認先が確認残高に対する回答を記載し、監査法人に送り返してもらえたらそれを回収することになります。

確認先からの問い合わせの内容やその結果については、コントロールシートの備考に記載する等してクライアントと共有することが重要です。苦い経験ではあるのですが、私自身クライアントと問い合わせ結果を共有していなかったことで、クライアントが取引先に同じことを確認してしまい、怒られた経験があります。幸い大事には至りませんでしたが、最悪の場合は、クライアントと取引先の関係が悪化し取引が打ち切られることも考えられるので確認先からの問い合わせは責任感を持って、丁寧に対応することが重要です。

STEP
残高確認状の内容の確認、確認差異がある場合は差異調整をクライアントに依頼

残高確認状回収後は、内容を確認し、確認した残高と一致していれば、OKで、差異があった場合には、クライアントに差異調整を依頼します。

その後、クライアントから差異調整結果を入手した後、調整事由が確認先事由によるものかクライアント事由によるものかで差異の取り扱いを決定します。確認先事由のものであればクライアントの残高に誤りはないので問題とせずクライアント事由のものであれば、会計処理の誤りになりますので、監査差異ということになります。

この差異については、サンプルベースで確認先を選定している場合には、監査法人のポリシーにより、誤謬を推定して算出することになります。そのため、サンプルベースで確認先を選定している場合、1件でもエラーがでるとそれなりの誤謬になる可能性があります。

残高確認状については、回収後網羅的に必要事項が記載されていることを確認する必要があります。該当なしではなく空欄となっている個所については、該当があるにも関わらず記載漏れとなっている可能性があるので、再送することがあります。特に銀行・証券会社宛の残高確認状については、項目数も多いので空欄となっているケースがそれなりに見受けられます。

まとめ

確認について
  • 確認は、監査人が会社の取引先に対して、事実を直接確かめる手続であることから、特に証明力が高い。
  • 主な残高確認状の送付先は、「銀行」「証券会社」「債権債務を有する取引先」「顧問弁護士」
  • 確認の流れ
    ①監査人が確認先を選定し、コントロールシートに記載
    ②会社にコントロールシートを送付し、住所情報を入れてもらう
    ③監査人が住所チェックを行い、問題なければ、PDFにした残高確認状を会社に送付
    ④会社で残高確認状を紙面出力し、押印ののち、会社から監査法人に郵送してもらう
    ⑤監査法人から残高確認状を確認先に発送し、確認先から返送を受ける
    ⑥監査人が残高確認状の内容を確認し、確認差異があれば会社へ差異調整を依頼する
    ⑦会社より差異調整結果を受領し、監査人にて検討を行う

終わりに

今回は、リスク対応手続の代表的な手続である「確認」について解説しました。

近年は、コロナの影響もあり在宅でのリモートワークを導入している会社がそれなりに増えています。このような会社では出社していないことからタイムリーに残高確認状を受け取ることができず、監査対応が遅延することが考えられます。また、そのような会社からは、紙面を利用せず電子メールで対応を依頼されることもあり、このような対応をすることもあります。

この場合上記のSTEPが少し変更となりますが、基本的に実施することは同じです。

また、電子での確認が実施できるように大手監査法人が出資して、会計監査確認センター合同会社という会社を立ち上げて、Webベースのプラットフォームによる確認を進めるような動きもあります。

このように、解説したような紙面での確認から脱却する動きはありますが、今後も証明力の高い監査証拠を入手できる確認は続けることになると思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは!

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