
株式会社と合同会社の違いは?
それぞれのメリット・デメリットは?
今回はこのような疑問に答えれるようにわかりやすく解説します。
こんにちわ。大阪の会計士/税理士の唐木です。
会社を設立して、事業をする際には、基本的に株式会社とするのか合同会社とするのかの2つの選択肢があります。
現在設立できる会社の種類としては、株式会社と合同会社以外にも合資会社と合名会社がありますが、いずれも経営者は、無限責任社員となる必要があり、合資会社においては、出資をする有限責任社員と経営をする無限責任社員の2名が必要となり、1人で設立することができず、良い選択肢とはいえません。
今回は、株式会社と合同会社の違いやそれぞれのメリット・デメリットについてお話しします。
株式会社と合同会社の違い
合同会社は、持分会社である
合同会社は持分会社であるという特徴があります。
持分会社は、出資者=経営者(社員と呼ばれます。)となりますが、株式会社は、経営者と出資者が必ずしも同じでなくても良い点が異なります。
株式会社においては、設立の時に、資本を提供してくれる第3者がいなければ、経営者が出資をして会社を設立することになるため、出資者=経営者となることが多いです。
しかしながら、その後、ベンチャーキャピタル等からの出資を受け入れて資金を調達することが可能です。
この際に株式と引き換えに出資をしたベンチャーキャピタルは、単なる出資者となり、経営者とは分離されることになります。
株式会社では、株式を発行することで出資と経営を分離していますが、持分会社では、株式を発行することはできません。
そのため、株式会社でなければ株式を一般に広く公開する、株式上場はできません。
持分会社は、出資者=経営者(社員)となることから、社員同士のつながりが強く、これらに流動性がないことに特徴があります。
新たに、出資者になるためには、社員の同意が必要になり、意思決定に当たっても、社員の頭数で行われることになります。
株式会社では、出資額に応じた株数で利益分配や経営権を有するのに対し、持分会社では、出資額に関係なく、社員1人1人が1個の議決権を有することになります。
株式会社のメリット
合同会社に比べ社会的な信用が高い
近年になって、合同会社も設立されるようになりましたが、まだまだ、株式会社のほうが主流です。
そのため、合同会社という名前に聞きなじみがないということもあり、株式会社のほうが社会的な信用を得やすいでしょう。
出資者と経営者が分離できているため、資本による機動的な資金調達が可能
株式会社は、出資者と経営者が異なるため、会社にとって返済義務のない資本を活用して、機動的な資金調達を行えます。
そのため、ベンチャーキャピタル等から資本提携を受けて上場を目指したり、規模を大きくする場合には株式会社にする必要があります。
合同会社の場合、出資者=経営者となるため、資本で資金を集めようとすると、出資のみでなく、経営にも関与してもらう必要があるため、実質的に資本での資金調達は不可能になります。
株式会社のデメリット
合同会社に比べると設立時のコストが高く手間もかかる
株式会社は、合同会社にはない定款認証の手続きをしなければならず、設立に手間がかかります。
株式会社は、登録免許税15万円、定款認証5万円、印紙代4万円、合計24万円程度がかかりますが、合同会社であれば、登録免許税6万円、印紙代4万円、合計10万円程度と株式会社のほうがコストが高くなります。
なお、電子定款とすることで、印紙代4万円はいずれも不要になります。
合同会社では不要な決算公告と役員の重任登記が必要になる
株式会社は、毎年決算公告を行う必要があります。
決算公告は、貸借対照表を5年分ホームページに載せることで電子公告をするか、官報又は日刊新聞紙に載せることで公告をする必要があります。
なお、資本金5億円以上又は負債総額200億円以上の会社法上の大会社は損益計算書も公告する必要があります。
また、株式会社においては、役員の在任期間が最大10年間と定められているのに対し、合同会社では、役員の在任期間に期限はありません。
そのため、株式会社においては、役員が変わらずとも、同じ役員を改めて役員に選任したという重任の登記を少なくとも10年毎に行わなければなりません。
いずれも実施しないと過料が科せられる可能性があるので注意が必要です。
発行している株式の割合が経営権となるため、支配される可能性がある
株式会社においては、出資者と経営者が分離されているため、資本による資金調達は、出資者に資金に応じた株式を渡すことで実施することになります。
この株式の割合が発行している株式の50%を超えた時点で、株主総会の普通決議の意思決定が自由にできることになってしまい、実質的に支配したという状況になります。
上場していない非公開会社では、株式の譲渡制限をつけることが通常であるため、知らぬところで経営権が奪われるというリスクは低いですが、上場している会社においては、ファンドに目を付けられ最悪の場合買収されてしまう可能性があります。
この点合同会社では、出資者と経営者が分離されていないため、このようなことにはなり得ません。
合同会社のメリット
設立時のコストが低く、会社の維持に係るコストも低い
株式会社のデメリットでお話しした通り、合同会社は、設立時のコストが株式会社に比べて、14万円程度安くなります。
また、毎年の決算公告は不要であり、合同会社には役員の在任期間に制限がないため、役員の重任登記を行う必要もありません。
出資者=経営者であり、議決権割合は頭数であるため立場は対等
また、利益の分配も自由に決めることができる
株式会社では、お金を出す出資者のほうが立場が上になることがありますが、合同会社ではこのようなことにはなり得ません。
代表社員とそうでない社員も議決権は、一人当たり一個となりますので、自分の意思を経営に反映することができます。
また、株式会社では、株式数に応じた利益配分となりますが、合同会社では、自由に利益配分を決定することができます。
合同会社のデメリット
株式会社に比べると歴史が浅く、社会的な信用が低い
株式会社の歴史は古く、日本初の株式会社は1873年に設立されています。
一方合同会社は、2006年に施行された会社法で新たに設立できることとなった形態であり、歴史が浅いです。
そのため、設立されている会社数は、圧倒的に株式会社のほうが多く、合同会社のほうが数が少ないです。
必然的に合同会社の認知もされにくい状況ですから、社会的な信用は株式会社のほうが高くなります。
出資者同士の結びつきが強く、人間関係が経営に影響する
これはいい面も悪い面もあると思いますが、出資者同士の結びつきが強いのが合同会社の特徴です。
合同会社を設立した当初は良好だった人間関係が、事業をするにつれて悪くなっていくことはあり得ますので、この点はリスクとして認識しておく必要があります。
まとめ
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
経営者と出資者 | 別々 | 同じ |
社会的な信用 | 高い | 低い |
設立コスト | 24万円程度 | 10万円程度 |
維持コスト | 決算公告、役員重任登記が必要 | 左記は不要 |
意思決定の方法 | 株式数に応じた議決権 | 1人あたり1個 |
利益分配 | 株式数に応じた分配 | 自由に設定可 |
終わりに
今回は、株式会社と合同会社について解説しました。
規模を大きくすることを考えている人は株式会社を、スモールビジネスを考えている人は合同会社を選択することにメリットがあります。
株式会社から合同会社への変更、合同会社から株式会社への変更をすることは可能ですので、いったんコストの低い合同会社を作っておいて、必要になった時に株式会社に変更するのでも良いでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは!